前回公開した、360度カメラ『Gear 360(Samsung)』での撮影についての記事に続き、今回はその映像素材と『Adobe Premiere Pro CC 2017』を使ってカンタンな編集にチャレンジしましょう。この記事ではMac環境でPremiereを初めて触る方向けの内容となっています。
Premiereはプロの映像クリエーターも使用する高機能アプリケーションですが手順通りに行えば初めて触る初心者でも簡単に基本的な編集があっという間にできてしまいます。

編集のゴール
・カメラ映像と別録音声の同期
映像と別に録音したこだわりの音をシンクロさせることができます。
・映像へのテロップ挿入
曲のタイトルや歌詞など文字を表示してわかりやすい映像に。
・タイトルのフェイドアウト
タイトルの消え方の印象をやわらかくすることができます。
・必要カットの抜き出しと書き出し
使いたい部分のみ抜き出して映像を書き出すことができます。
・VRビデオモード機能での再生
Premiereの中でも映像をぐるぐる回して見ることができるのでVR映像編集が便利!

まずPremiere Proを初めて立ち上げると見慣れない機能名やツールが連なり目眩がする方も多いでしょう。
これらを細かく説明したサイトはたくさんあるのになかなか身につかない方が多いと思います。作業や作業者によっては使わないものもあるため混乱することもあります。今回は編集の作業内容に特化し、記事を進めたいと思います。

 

Point0-1. Premiere達人への最初のステップ、プロジェクトファイルとは?!

アプリケーションを起動するとこのプロジェクトファイルの新規作成を促されます。このファイルの中で映像の編集を行っていくのですが編集が完了しても、このデータそのものは完成した映像データにはなりません。その名に”プロジェクト”とあるように、制作したい映像の企画(プロジェクト)に関する素材や編集過程のアクションを入れておく箱のようなものです。編集が完了したらプロジェクトファイルからムービー形式のデータに書き出す必要があります。
映像の編集というと素材データをPremiereで開いて直接編集を行うものだと思われる方も多いのではと思います(特に他のグラフィック系ソフトを使った経験のある方)。まずは、このプロジェクトファイルについて理解する必要があります。

①Premiereを立ち上げて現れる画面から新規プロジェクトをクリック。②プロジェクトの名前を記入しOKをクリック

 

Point0-2. これが分かればPremiereは怖くない!ワークスペースについて

上記のプロジェクトファイルとそれを開いた画面であるワークスペースの意味を理解すればPremiereで何でも出来るようになります。
ここが一番のつまずきポイントだからです。

①プロジェクトパネル(素材箱)
映像の編集に必要な映像素材や音源ファイルを読み込んでおく場所です。今回の場合はGear360で撮影した360度映像と別撮りした音のファイルを読み込みました。
Premiere上で作成した素材もこちらに入ります。今回はPremiere上で映像に重ねるテロップの文字を作りましたのでここに表示されます。ここに入れたものをクリップと呼びます。
②ソースモニター(素材箱専用のサブモニター)
主にプロジェクトパネルに入っている映像や音声素材をプレビューして再生を行うことができます。個々の素材の編集も出来ます。
③タイムラインパネル(メインの作業台)
プロジェクトパネルの素材をここにドラッグして持ってきて並べる場所です。
映像と音を並べて合わせたり、タイムラインの任意のところで文字を入れたり、フェイドイン・アウトを行ったり、主な作業はこちらで行います。
④ツールボックス(作業道具)
タイムラインパネルで作業をするときに必要なツールが入っています。
⑤プログラムモニター(作業台の完成作品を映すメインモニター)
タイムラインパネルでの作業を再生して確認することができます。ここで編集をチェックして完成の判断を行います。


それでは実際に作業をはじめてみましょう!

 

Point1. ドラッグ&ドロップで素材をとりこむ

-プロジェクトパネルでの作業-

今回必要な映像と、別録した音の素材をドラッグ&ドロップでプロジェクトパネルに放り込みます。カンタンな作業ですが素材はプロジェクトパネルを通してでないと使うことができないので必要なものは全てここに入れておきましょう。

 

Point2. これを忘れると迷宮入り…シーケンスの設定

-プロジェクトパネルでの作業-

初心者の方、素材を取り込んだらシーケンス設定、と必ず覚えておきましょう!これはプロジェクトパネルで生成できます。
①プロジェクトパネルの右下のゴミ箱の左の新規項目アイコンからシーケンスを選択します。

②セッティング

・「編集モード」を「カスタム」に
・「フレームサイズ」を撮影したサイズと同じ数字を打ち込みます。
・「ピクセル縦横比」が「正方形ピクセル(1.0)」になるように。
ここを忘れるとあとで自動的に映像が切れてしまい原因がわからず迷います。
・「フィールド」は偶数フィールド(映像のチラツキを軽減)にします。
・ビデオプレビューの幅と高さがビデオで設定した数値と異なっている場合はリセットを押し、変わらないようならチャンネル形式を変更してください。
ここを見落とすと任意の比率やファイルサイズで書き出しができず後で原因がわからなくなり迷います。
・VRプロパティで投影法を正距円筒に。ここの設定がされていないと編集でVRビデオモードが使えません。
③OKを押して閉じる
④プロジェクトパネルにシークエンスが作成され、タイムラインパネルに映像と音のタイムラインが現れます。ここに素材を載せて映像を編集していきます。
ここまで出来たらあとは感覚的に出来ますので難しくはありません。

Point3. 3秒で出来る!映像と別録音源との同期

-タイムラインパネルでの作業-

Premiereではカメラの映像に入っている音と、別録で撮った音源のそれぞれの波形を読み取って自動的に同期させる機能があります。カメラのマイク以外で録音した音源を映像と合わせたいときに使用します。
同期はあっという間に出来てしまいますので、その機能を使うために準備から順を追ってやってみましょう。
①プロジェクトパネルのシーケンスをクリックしてタイムラインパネルにシーケンスのタイムラインを表示させます。

②プロジェクトパネルから映像の素材をドラッグしてタイムラインパネルに重ねます。
タイムラインパネルには映像トラックの行が複数行、音トラックの行が複数行ずつに固まって別れています。Gear360の映像素材にはカメラのマイクで録音された音も含まれますので、映像と音のそれぞれのトラックを使用しています。 

③プロジェクトパネルから別録音源の素材をドラッグして空の音トラックに配置します。
音のみなので音のタイムライン1行を使います。先ほどのカメラの音の下に置きます。

ここまでで準備は完了です。では映像と音を同期させてみましょう。
④動画のタイムラインをクリックで選択し、Shiftキーを押して、別録音源のタイムラインも同時選択します。動画のタイムラインを選択すると動画と音のタイムライン両方が選択されますが気にしなくて問題ありません。
⑤右クリック(またはcontrol+クリック)して表示されるリストから”同期”を選びます。
この時、両方の音のタイムラインが同時に選択されていないと選ぶことができませんので選択忘れがないか確認しましょう。
⑥表示されるダイアログのオーディオを選択し、OKを押す。するとタイムラインがマッチする場所に動いて同期が完了です!

同期は完了しましたがタイムラインにはカメラマイクの音と別録の音の2つの音があるため、使わない音をオフにします。このまま再生すると両方の音が再生してしまいます。通常、カメラの映像と音のトラックはリンクしているのでまずこれを解除してバラバラにします。それから映像と別れた音のトラックのみをオフにします。

⑦動画トラックを右クリック(またはcontrol+クリック)して表示されるリストから”リンクを解除”を選びます。
これで動画とその動画に含まれる音はバラバラになりました。
⑧バラバラになったほうの音のタイムラインを右クリック(またはcontrol+クリック)して表示されるリストから”有効”を選びチェックを外します。
これでカメラの音は停止したまま別録の音が再生します。カメラの音は必要なければ削除しても問題ありません。選択してdeleteボタンで消すことができます。
⑨プログラムモニターの再生ボタンを押して実際に同期できているか確認しましょう。

Point4. 有り無しで印象が全然違う!映像に文字を入れてみよう

-タイトルツールでの作業-

Premiereではタイトルやテロップなど文字を映像の上に重ねて表示する事ができます。
今回のライブ映像の場合は曲のタイトルを演奏の冒頭に入れることにしました。

①文字ツール(Type tool)をツールパネルから選択します。
②プログラムモニターに表示しているシーケンスの映像上に直接文字を書き込めます。
映像の上をクリックすると赤いボックス(Text box)が表示されるのでその中に文字を記入していきます。テキストをプログラムモニターに打ち込むと、タイムラインパネルの空の映像トラックに自動的に文字のトラックが追加されます。

③メニューバーのウインドウからエッセンシャルグラフィックスパネル(Essential Graphics)を開きます。
④エッセンシャルグラフィックスパネルでは文字の大きさ、色、フォントの変更や、影をつける事ができます。
⑤選択ツール(Selection tool)をツールパネルから選択します。
⑥選択ツールを選ぶと文字ボックスが青色に変わり、クリック&ドラッグで文字の場所を変更する事ができます。
⑦文字のトラックの端っこをクリックして左右にドラッグすると文字の表示時間を変える事ができます。


これで文字の設定ができました。インジケータを最初に戻して再生して確認してみましょう。

Point5. プロ編集のキホンのキ!フェイドアウト。

-タイムラインパネルでの作業-

表示させたタイトルが自然にだんだん消えていく効果を入れます。
今作成したタイトルがタイムラインの中でブツッと消えてしまうので居心地が悪いためです。

①タイムラインパネルのタイトルのトラックをクリックして選択します。選択が外れていると適応できませんのでお気をつけください。
②タイトルを消し始めたいタイムラインまでインジケータ(青いバー)を持っていきます。

 

③トラックの左にある小さな丸いマーク(キーフレーム追加アイコン)をクリックします。このマークが出ないときはトラックの上下の幅を広くしてみてください。(トラックとトラックの境目の薄いグレーの線を上下にドラッグすることで幅を変えることができます)
④トラックのライン上に丸いマーク(キーフレーム)がつきます。丸がつかないときはタイトルのトラックが選択されてない可能性がありますので確認してください。
⑤次にタイトルが完全に消えて見えなくしたい時間のところまでインジケータ(青いバー)を持っていきます。
⑥トラックの左の丸いマーク(キーフレーム追加アイコン)をクリックします。
⑦トラックのラインにキーフレームがもうひとつつきます。
⑧⑥で作成したキーフレームをドラッグしてトラックの下部まで移動させます。線が丸と一緒に下まで折れます。
キーフレームの位置は不透明度を現します。トラックの最上部にあれば100パーセント見えますが下に下げる程0パーセントに近づき薄く見えなくなっていきます。


⑨インジケータを最初に戻して再生してみましょう。タイトルがだんだん消えていくようになりました。


キーフレームは左右にも動きます。再生してみながらなんども調節ができます。

Point6. 知らないと損をするVRビデオ機能

-プログラムモニタ/ソースモニタでの作業-

通常、映像の編集は360度で撮影したものであっても平面で行いますが最近Premiereに追加されたVRビデオ機能を使って便利に編集中のコンテンツを見ることができます。
この機能を使うとプログラムモニタやソースモニタで360度ぐるぐる回しながら確認できますので仕上がりが分かりやすくなります。
Gear360での撮影の際、レンズの前後の向きを間違えたために見づらくなった映像素材も360度に展開されれば正しい向きで撮影した映像と同じように容易に編集や確認が出来ます。
プログラムモニタ/ソースモニタどちらも操作は同じです。
①各モニターにビデオを表示し画面を右クリックします。表示されたリストにあるVRビデオ→有効を選択します。

※VRビデオが選べない場合、シーケンス設定を確認してください。プロジェクトパネルのシーケンスを右クリックしシーケンス設定を表示、一番下のVRプロパティの投影法を正距円筒に。ここの設定がされていないと編集でVRビデオモードが使えません。
②モニタの映像がぐるぐる回せるようになりました。


もとに戻したいときは①のVRビデオの有効のチェックを外します。

ボタン一つでビデオ機能を切り替える方法もあります!
①VRビデオを有効にした状態で各モニタパネルの右下の+アイコンを押します。
②ボタンエディターからVRアイコン(画像参照)を選択し下の青い四角の中にドラッグして入れます。
③OKを押します。これでこのアイコンを押すだけでVRビデオ表示のオン/オフが切り替えられるようになります。

Point7. これで完成!映像の切り出し&書き出し

-プログラムモニタでの作業-

映像の必要部分を切り取って、InstaVRで使用するMP4の映像ファイル形式に書きだしてみましょう。
切り出しは長編の動画の中の一部を抜き出したり、今回のように演奏の開始前や後の数秒間、余分に録画しているものが書き出す映像に入り込まないように行います。

①プログラムモニタ(タイムラインパネル)のインジケータを動かして抜き出す映像の開始位置を決めます。
②プログラムパネルの”{”マークを押します。これで映像の開始位置が設定されました。
③次に映像を終了したいところにインジケータを移動させます。再生の操作も可能です。
④プログラムパネルの”}”マークを押します。これで映像の終了位置が設定されました。
映像の開始(イン)と終了(アウト)で囲われた部分が薄いグレーになりました。この位置はドラッグして動かし調整ができます。
抜き出す部分が決まったら映像を書き出してみましょう。
書き出し設定は何の端末で見るかなどで変わってきますのでここでの設定はあなたの用途にマッチしない場合もありますが参考にしてみてください。
①画面の上部のメニューバーからファイル→書き出し→メディアを選びます。


②書き出し設定を行います。

・「形式」のオススメはH.264。圧縮率が高く少ないデータ量でも高い画質と高フレームレートを保つことができます。インターネット上で見たりアプリとしてダウンロードするものに向いています。
・「プリセット」はリリース媒体によって選びますが選んだものによっては勝手に、その下の基本ビデオ設定内のサイズが変更されますので『ソースに合わせる』を押して戻すようにしましょう。
・出力名の横の青くなっている名称をクリックすると書き出しファイル名と書き出し先を変更できます。デフォルトではプロジェクトファイルと同じところに入ります。
・「VRビデオ」の『VRビデオとして処理』にテェック。
・『書き出し』をクリックで書き出しが開始します。
映像が書き出せたら映像を再生してみましょう!

Point8. VR映像クリエーターの必須アプリ!GoPro VR Player

360度動画をカンタンに確認できるデスクトップアプリです。
Download GoPro VR Player (free)


完成した動画はそのままQuickTimeで開いてもぐるぐると回すことはできません。
このGoPro VR Playerがあればファイルをドラッグ&ドロップするだけで360度に対応した映像を見ることができます。

これで素材は整いました!次はInstaVRでオーサリングしてみましょう!